それは、サンタカテリーナの家にお引っ越ししてから二日目の夜の事。
連日の凍える寒さに
「あの、もし可能なら毛布をもう一枚貸して欲しいのですが・・・」
と、バスコじいさんに電話で頼んでみたメガネ(正しくは相棒だけれど)。
「寒いのか?」
と問われ
「はい、寒いんです」
と答えると
「そこに毛布の余分は置いてないのか?」
とまた問われ
「はい、無いんです」
と答えると
「わかった、出先から帰ったらすぐに持って行く」
と電話を切られたのでした。
で、ホントにすぐさま掛け布団を運んできてくれたバスコじいさん(やっぱり頼りになるのです)。
いつもの如く風のようにササッと消えるかと思いきや、
「君たちの仕事にワシはとても興味があるんだけど、どんな仕事をしているのか見せてもらえるかな?」
と予想外のお願いをモジモジとされたのでありました。
もちろん「いいですよ?」と、このHPや相棒の描いている水彩画を披露したところ・・・。
「素晴しいよ!すごいじゃないか!」
と、大変お気に召して下さったらしいバスコじいさん。
「もし君たちに興味があるなら、シエナの近くにあるカステッロ(お城)を見に連れて行ってあげるよ。」
とキラキラした目で言い出したのでした。
あまりに突然の申し出に「ええっ!??」と思ったものの、「もちろん君たちが行きたいのならだけどね」と言いつつ「このカステッロは素晴しいんだよ?」とか「写真に撮ったら絵になるよ?」なんて何度も何度も熱くお誘いくださるので(笑)、
「それでは、よろしくお願いします。」
と答たメガネキョウダイなのでした。
・・だって、ホントにどうしても連れて行きたそうだったんだもん。
そして昨日、アパルタメントの内線電話で「明日9時にね」と告げられた我々。
朝の9時に合わせ、大慌てで準備を整えたのでありました。
しかも、何故か今朝に限って他のラガッツィ達も朝8時頃から起き出してきたものだから、2つしかないドッチャ(シャワー)はもう大混雑。
「もう!いつもは寝てるくせに!遅れちゃうよ!」なんて焦りつつ9時少し過ぎに1階まで駆け下りた我々なのでした(もちろん、9時ジャストにせっかちなバスコじいさんから「用意はできてる?」の催促電話も頂いちゃいました)。
大急ぎで1階の呼び鈴を押したメガネ。
ブーッガチャン!と開いたドアの向こうにはニコニコ顔のバスコじいさん。
「おはようございます!」
と挨拶すると、
「用意は良いかい?じゃあ、車に」
との指示。さすがせっかちさん。
挨拶もそこそこに、アパルタメント前に停めてあるフィアット・パンダの前へ急ぐメガネ。
ドアのガチャンと閉まる音に振り向くと、バスコじいさんの家からヒョッコリ現れたのは、あれ?貴方は確か用務員のお兄さん?・・なのでした。
そしてメガネの前を通り越し、そのままフィアット・パンダに乗り込む彼。
事の成り行きが飲み込めず呆然と立ち尽くす我々に、早く乗って乗って!のジェスチャーです。
「え?あれ?バスコじいさんは???」
と思いつつも、一応車に乗り込んだメガネ。
バタン!とドアを閉めたとたんに、すぐさま車は発進です。
アレレ?動き出しちゃいましたよ??
そうして「?」だらけのメガネと相棒を乗せた白いフィアットパンダは、用務員さんの運転でずんずんシエナの街を進んで行くのでありました。

しばらく車が走ったところで、
「あの、今日はバスコじいさんは一緒じゃないんですか?」
と怖ず怖ずきいてみたメガネ。
すると、
「ああ、来ないよ彼は」
とアッサリ。
ああ、やっぱりと顔を見合わせる我々。
「あの、私たちてっきりバスコじいさんが運転するものと思っていたのですが・・」
と重ねて尋ねると、
「ああ!うんそうだね、でも今日は僕が一緒に行くから!」
とのお答えなのです。
ああ、そうなのですか。そうなのですね。
バスコじいさんはいかにも自分が連れて行くからっ!みたいな言い方をしてましたけど、自分は行かないのですね?と、ようやく理解することができたメガネキョウダイなのでした。
だって、バスコじいさんが「連れて行ってあげる」って言ってたんですよ?
てことで、今日はバスコじいさんではなく、用務員さんと一緒にカステッロまで出掛けていたメガネなのです。
ふうっ、前置きが長かったな。

しばらく走って、町外れに出ると、
ガサガサとおもむろに地図を開き始めたお兄さん。
どうしたのかな、と思っていると
「君たち、このお城には行った事無いんでしょ?」
と彼。
「はい、無いんです」
と答えると、
「実は僕もなんだよね。ふふふ。」
だそうで・・・
って!えええっ!!
バスコじいさん、行った事も無い人を運転手として無理矢理行かせていたのですかっ!?(笑)
とにもかくにも、正しい道すらわからない3人で、お城を目指してレッツゴー!なのでありました。